NO.3 YZF-R1のエンジンを分解する
25.000Km走行の’04R1です。別段不具合があるわけではないのですが、腰上オーバーホールをしました。
燃焼室は距離相応のカーボン堆積です。
FI(フューエルインジェクション)のバルブのカーボン堆積の仕方がキャブレターと違っていて、EX(排気)側はいいんですが、
IN(吸気)側を見ると、それぞれの気筒で1本だけやたらと堆積してます。理由は、インジェクターの角度によると思うんですが、
このバルブに噴射されたガソリンが多くいってしまうからでしょう。
それにしてもこのカーボンの塊は
何かいやですねー。
************************ 只今作業中*************************
どうですか?きっちりピカピカに研磨しました。バルブの刻印(5VY)までなくなりました。でも磨き過ぎはだめで、データに沿った
マージンは残してあります。
燃焼室も、IN・EXポートもザラザラした砂型の跡やバリを無くし、ツルツルにしました。ピストンも同様です。
バルブシートの打ち込み付近のバリは、さすが作り込みがしっかりしていて、他のモデルと違ってそんなにひどくありませんでした。
写真で見ると、なんでもないかの様にポンポンポンと作業が進んでいるように思えますが、ここまでするのに物凄く大変でした。
プロが大変だなんていうな、って話ですが、工作機器や我が工作手を駆使し、暇をみつつこつこつと磨いて3ヶ月半ぐらいかかりました。
さて、組み上げです。’04以降のモデルからシリンダーとクランクケースが分割できるようになっているのですが、このシリンダーは、
ピストン下降時の圧を抑えてポンピングロスを少なくするために、スカート部がハの字型の切り欠き状になっています。通常だと単に
筒状になっているのですが、この形状のおかげで今まで通りのピストンを下から入れるやり方だとピストンリングの、特に最下段の
オイルリングがこの切り欠きに引っかかって入らないんです。しかもクリアランスもキツイときたもんだ。
ちなみにマニュアル通りだと、ピストンを入れるのにクランクケースまで割っています。
さて、どうしたものかと悩みました。そして、これがだめなら全バラだと覚悟を決め(くだらない覚悟ですいません。)、ある方法を思いつきました。
まず、ピストンをピストンリングコンプレッサを使い4個ともシリンダーに入れます。2・3番のコンロッドを上死点にして、2・3番のピストン
を下げてからクランクケースにセットしつつ外側からピストンピンを入れてからスナップリングを入れます。そして今度は1・4番ピストン
を下げ、2・3番ピストンがシリンダーから抜けない程度にシリンダーを上げつつ1・4番ピストンの外側からピストンピンを入れてから
スナップリングをいれます。
これがまた思っていた以上に大変でした。スナップリングがなかなか入らないんです。でも、お手製の特殊工具を作製して入れることが
できました。無事、腰上を組めました。
に、非常に大事な所なんですが、バルブクリアランスの調整です。これによってアクセルのつきや静寂さ(もともとバイクのエンジン
は少々うるさいので気にしなくてもいいんでしょうが、ヘッドからのカチカチ音がひどいと気になりますよね。)強いて言えばエンジンの
粘りや高回転の伸びにまで影響します。
バルブクリアランスのサービスデータは、EX側 0.21〜0.25mm IN側 0.11〜0.20mm
このエンジンの分解前のデータは、
EX側  1番 0.23 0.24     2番 0.23 0.21      3番 0.21 0.22    4番 0.20 0.18
IN側  1番 0.13 0.14 0.14  2番 0.14 0.14 0.14  3番 0.14 0.15 0.15  4番 0.14 0.15 0.12
まあこんなもんかという感じなんですが、4番のデータがひっかかりますね。このクリアランスの詰まっている理由としては、私の見解ですが、
4番側にカムチェーンがあるので、引っ張られることで少々カムシャフトが下がってしまい詰まってくるのでしょう。
もう少し早い段階でバルブクリアランスは調整した方が良いのでしょう。でもこのR1は狭くてそれさえも大変なんですけど。
私が狙う所のバルブクリアランスですが、EX側 0.22〜0.23 IN側 0.15〜0.16 です。なるだけ隣り合うバルブのクリアランスは揃えた方が
いいです。全て揃えれるのが理想なんですが、それをするには、アジャスティングパッドを0.01mm単位で削ってマイクロメーターで測らなく
てはならないのでこれもまた大変なので隣り合うバルブのクリアランス差を0.01mmで妥協しました。
EX側  1番 0.23 0.23     2番 0.22 0.23      3番 0.22 0.23    4番 0.22 0.22
IN側  1番 0.14 0.14 0.15  2番 0.16 0.15 0.16  3番 0.15 0.15 0.15  4番 0.16 0.15 0.15

最後の仕上げはFIの同調です。キャブレター同様FIも同調が必要です。やり方は少々違っていて、エアースクリュウでやります。
デジタルのバキュームゲージを使うとよく分かるのですが、アイドリング時の同調はとれても、アクセルを煽った時やその後の負圧の落ち込み
にばらつきがあるのは、バルブクリアランスにばらつきがあるからです。今回の調整で期待以上に揃いました。
使っているオイルは、MOTULの300Vです。このオイルは、交換しただけでその効果を感じることができます。
エンジンブレーキが穏やかになり、1速ギア高かったかな?と思ってしまいます。さすがレースで使っているだけのことはあります。
値段もさすが、と思うんですが、一度入れたらやめられません。エンジンがもうチュルチュルになります。
実走の感想ですが、劇的な違いと言うわけではありませんが、低回転は粘り、中回転はトルクが少し厚くなり、高回転は綺麗にグワーと
今まで以上に早くレブまで吹け切ってくれます。タペット音も気にならないくらい少ないです。これが本当のR1のポテンシャルなんでしょう。
最高です。R1を一般道でレブまで回せるのか?とお思いの方もいらっしゃるでしょうが、青森ではそういう道がいっぱいあるんです。
3速まではきっちり使えます。
ちなみにこのR1は、私(店長 千葉 達士)のプライベートマシーンです。刻々システムだけが進歩して、エンジンの構造等は理論上把握
していても、最新のバイクのエンジンを調整したりオーバーホールする機会はないままモデルチェンジしてしまいます。構造は益々緻密
なものになり、実際にやってみると一昔前のやり方ではできなかったりして日々技術の鍛錬が必要とされます。そういった意味も踏まえ、
自分のバイクはある意味実験台みたいなもので、こういった経験やノウハウを皆様のバイクの整備に活かしていきたいと思います。
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